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在宅医療経営ラボ|構造設計の専門家

設計シリーズ 第5弾|判断基準設計

「その判断、
誰がするんですか?

判断できないスタッフではなく、
「判断基準が設計されていない」構造の問題です。

判断基準設計|在宅医療経営ラボ

この記事では、在宅医療クリニックで「判断の空白地帯」が生まれる構造的な理由と、スタッフが自走できる判断基準の設計方法を解説します。

第4弾では「情報共有設計」を取り上げました。情報が共有されても、判断基準がなければスタッフは動けません。この2つはセットで機能します。

この記事でわかること

  • 「判断できないスタッフ」が生まれる本当の理由
  • 判断基準がない現場で起きる3つの問題
  • 在宅医療における判断レベルの設計方法
  • 緊急度・対応範囲の判断基準テーブルの作り方
  • 判断基準設計の実装ステップ

「判断できないスタッフ」は存在しない——判断基準がないだけ

訪問診療クリニックで院長が感じる最大のストレスのひとつがこれです。

「なぜ自分で判断できないのか。いちいち聞いてくる。」

「緊急性があるのかないのか、なぜ自分で判断できないのか。」

しかしこれは、スタッフの能力や意識の問題ではありません。

「この状況ではここまで判断していい」という基準が、どこにも存在しないからです。

外来だけの時代は、院長がその場にいて即座に判断できた。しかし訪問診療では——

  • 院長は外出中・移動中で即時確認できない
  • 患者の状態変化が電話越しにしか伝わらない
  • 「間違えたら医療事故になる」という恐怖がある
  • どこまで自分で判断していいか誰も教えてくれない

この状況で「自分で判断しろ」と言われても、スタッフは動けません。判断基準の設計なしに、スタッフの自走は生まれません。

判断基準がない現場で起きる「3つの問題」

問題① 過剰確認が止まらない

「念のため確認」が習慣化します。本来スタッフが判断できる内容でも、「責任を取りたくない」という心理から院長への確認が増え続けます。結果として院長の時間が失われ、訪問診療の質も下がります。

問題② 判断の質がスタッフによってバラバラになる

基準がなければ、判断はスタッフ個人の経験と性格に依存します。ベテランと新人で対応が全く変わり、患者・家族が混乱します。これは医療の質のムラであり、クレームや不信感の原因になります。

問題③ 緊急時に対応が遅れる

最も危険なのはここです。「これは緊急か・緊急でないか」の判断基準がなければ、スタッフは院長に確認するまで動けません。深夜・休日の緊急コールで判断が遅れることは、患者の生命に直結します。

💡 3つの問題に共通する原因

すべての根本は同じです。「この状況ではここまで判断していい」という基準が設計されていない。

逆に言えば、判断基準を正しく設計するだけで、この3つは同時に解決できます。

「うちの現場もこの状態かもしれない」と感じたら——

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在宅医療における「判断レベル」の設計方法

判断基準の設計で最も重要なのは、「緊急度」と「対応範囲」の2軸で判断レベルを定義することです。

❌ 失敗する判断基準

「緊急の場合は院長に連絡」という曖昧な基準だけ。

→「緊急かどうか」の判断自体ができないので意味がない。

✅ 機能する判断基準

「体温38.5℃以上・SpO2 94%以下・意識変容」は即院長連絡、それ以外は看護師判断で経過観察。

→ 数値・状態で明確に定義されている。

緊急度・対応範囲の「判断基準テーブル」

以下は、訪問診療クリニックにおける判断基準設計の基本モデルです。

レベル 状態の目安 誰が対応するか 対応内容
レベルA
即時対応
意識障害・呼吸困難・胸痛・SpO2 90%以下・大量出血 院長(即時) 緊急往診・救急搬送の判断
レベルB
当日対応
発熱38.5℃以上・SpO2 94%以下・転倒・著明な症状変化 看護師→院長報告 看護師初期対応・院長に当日報告・往診検討
レベルC
次回対応
軽度の体調変化・家族からの一般的な相談・服薬確認 看護師判断 看護師対応・記録・次回訪問時に確認
レベルD
事務対応
スケジュール変更・書類・一般的な問い合わせ 事務・コーディネーター 事務処理・必要に応じて看護師へ引継ぎ

※上記はモデル例です。クリニックの患者層・体制によって最適な設計は異なります。

📌 設計のポイント:「数値」と「状態」で定義する

「様子がおかしい」「なんとなく心配」という曖昧な表現は判断基準になりません。

体温・SpO2・血圧・意識レベルなど、数値で定義できるものは必ず数値で設計します。数値化できない状態は「具体的な行動の変化」で定義します。

判断基準設計の実装ステップ

  1. 現状の「判断の空白地帯」を洗い出す 直近1ヶ月で院長に確認が来た内容をすべて記録します。「何を判断できていないか」を可視化することが最初の一歩です。
  2. 緊急度を4レベルに分類する 上記テーブルを参考に、自クリニックの患者層・体制に合わせた緊急度レベルを設計します。最初は4レベルで十分です。
  3. 各レベルの「数値・状態基準」を明文化する 曖昧な表現を排除し、誰が読んでも同じ判断ができる基準を作ります。院長・看護師長・ベテランスタッフが集まって作成するのが理想です。
  4. 「グレーゾーン事例集」を作成する 実際の現場でよく起きる曖昧なケース(例:発熱37.8℃・軽度の呼吸苦・家族が不安を訴えている)について、過去の対応事例をもとに判断基準を追加していきます。
  5. スタッフと共有・試運用・定期改訂する 作成した判断基準をスタッフに共有し、2〜4週間試運用します。「この基準では判断できなかった事例」を集めて月1回改訂します。

この5ステップを完了したクリニックでは、院長への確認件数が激減し、緊急時の対応速度が上がります。

判断基準が設計されると、現場はこう変わる

判断基準設計が機能すると、現場に具体的な変化が起きます。

設計後に起きる変化

・スタッフが「これは自分が判断していい」と自信を持って動ける

・院長への確認が「本当に必要なもの」だけになる

・緊急時の対応が迷わず・素早くなる

・新しいスタッフでも判断基準に沿って動ける

これが「設計で9割決まる」の意味です。「優秀なスタッフが判断する現場」から「仕組みが判断を支える現場」へ——これが在宅医療を持続可能にします。

在宅医療経営ラボの支援内容

在宅医療経営ラボでは、「判断基準設計」を含む10の設計を統合的に支援します。

  1. 現状診断収益・人員・動線データをもとに、構造上の課題を可視化します。
  2. 設計提案外来と訪問診療が両立する運営モデルを設計します。
  3. 実装支援現場への落とし込みまで、一貫してサポートします。

在宅医療 設計費

現在、月3件限定でモデルケースとして受け付けています。実績構築を目的とした特別価格です。

【毎月3件限定】初回設計費
初回限定価格
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この記事を書いた人

河井貴幸|在宅医療設計士

医業経営アドバイザー/在宅医療経営ラボ(有限会社メディカルラボ)。外来・訪問診療・人員・集患・動線の統合設計を専門とする「在宅医療アーキテクト」として、クリニックの構造的課題に取り組む。