参謀日誌|あたり前は、誰が決めた?

ある受付で、スタッフの方からふと聞かれた一言が、私自身の言葉遣いを見直すきっかけになりました。

「これ、なぜこの順番でやってるんでしょうか」

受付のスタッフさんが、ふとそう漏らしました。隣にいた院長先生も、ベテランの事務長さんも、すぐには答えられませんでした。しばらくして出てきたのは、「前から、そうだから」という一言だけでした。

“あたり前”は、誰も設計していない

26年間、700件以上の現場を見てきて、こういう場面に何度も出会いました。誰かが悪意を持ってその手順を決めたわけでも、怠けているわけでもありません。ただ、一度決まった“あたり前”が、一度も問い直されないまま、今日までそのまま続いてきただけなのです。

業界の常識だから。昔からそうだから。医療だから仕方がない。こうした理由は、実は理由になっていません。誰かが、いつか、何かの事情で決めたことが、そのまま引き継がれているだけです。

「先生、その“あたり前”は、誰が決めたんでしょう?」と聞くと、答えを渡していないのに、院長先生ご自身が自院の前提を見直し始めます。問題を指摘するより、問いを渡すほうが、現場は深く動き出します。

「営業」という言葉も、見直す時期に来ている

この視点で振り返ると、私自身が長く使ってきた言葉にも、同じことが言えると気づきました。「院長先生以外は、全員営業を」。この言葉です。

「営業」には、数字を追う、売り込む、というニュアンスがどうしても含まれます。けれど実際にスタッフの皆さんに担っていただいているのは、クリニックの取り組みを、患者さんやご家族、そして地域の連携先に、誠実に伝え続けることでした。それは営業ではなく、広報活動です。

在宅医療の患者さんは、基本的に紹介を通じていらっしゃいます。地域包括支援センター、居宅介護支援事業者、訪問看護ステーション、連携先のクリニック——この方々との日々のやり取りが、そのままクリニックの評判となり、紹介の数に直結します。電話一本、FAX一枚、訪問時の一言までもが、実は広報活動そのものなのです。

院外の広報と、院内の接遇は、両輪である

広報が院外での信頼構築だとすれば、院内で患者さん・ご家族に向き合う接遇は、その信頼を確かめる場所です。院外での信頼が院内での安心感につながり、院内での丁寧な対応が院外での評判につながる。この循環が、集患・増患の土台になります。

土台がしっかりした組織は、変化に強く、持続的に成長します。私が「人を育てる設計」にこだわるのは、この土台をつくるためです。

人が育てば、組織が育つ。組織が育てば、経営が育つ。そして、その一歩目は、いつも同じ問いから始まります。

あたり前は、誰が決めた?

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