参謀日誌|誰も、紹介してくれなかった
現場に入った初日、私が何をしに来た人間なのか、知っていたのは院長先生だけでした。今回は、そこから始まった話です。
「こちらは、河井さん」
院長先生はそれだけ言うと、診察室に戻っていきました。看護師さんも、事務のスタッフの方々も、私が何をしに来たのか、誰からも聞かされていない様子でした。名刺を渡しても、丁寧に受け取ってはもらえます。けれど、目は合いません。休憩室に顔を出すと、それまでの会話が、ふっと止まる。そんな空気を、これまで何度も経験してきました。
「査定に来た人」だと思われていた
最初の数日、私は何も提案しませんでした。資料も作らず、質問らしい質問もせず、ただ現場の動きを見ていました。しばらく経ってから、あるスタッフの方に聞かされた話があります。「最初は、本部から評価をしに来た人だと思っていました」。悪気があって身構えていたわけではありません。外から来る人間は、たいてい何かを指摘しに来る。そう構えるのは、現場にとってごく自然な反応です。
そこで「そうではない」と言葉で説明しても、あまり意味はありません。警戒は、説明で解けるものではないからです。
現場を「見る」ことから始める
評価するために来たのではないと分かってもらうには、言葉より先に、動き方で示すしかありません。私は、まず現場の仕事を一緒にやってみることにしました。書類の整理を手伝い、電話を取り、小さな困りごとを一つずつ片付けていく。派手な提案は、何もしていません。それでも、少しずつ、休憩室での会話が、私の前でも止まらなくなっていきました。
コンサルタントは、外から診断し、答えを持ってきます。アドバイザーは、中に入り、現場の人たちと一緒に答えをつくっていきます。信頼は、その違いの先にしか生まれません。
本当の問題は、警戒が解けてから見えてくる
警戒が解けたころ、ようやく現場の本当の困りごとが見えてきました。それまで院長先生から聞いていた話とは、少し違う景色でした。人は、評価されると思っている相手には、本音を見せません。信頼が置けると分かって初めて、本当の課題を話してくれます。アドバイザーの仕事は、そこから始まります。
今でも、新しい現場に入るときは、名刺よりも先に、隣で一緒に手を動かすことから始めています。紹介してもらえるかどうかより、自分がどう動くかのほうが、ずっと大きな意味を持つと思っているからです。
外部の人間に現場を見せることへの不安、よく分かります。まずは小さなご相談からでも、ホームページのお問い合わせフォームからご連絡ください。
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