参謀日誌|なぜ、一人で経理も人事も見られるのか

在宅医療の設計をテーマにしたシリーズは、先日の第10弾で一区切りとなりました。ここからは「参謀日誌」として、現場で見聞きしたことを、日誌という形で綴っていきます。

第1弾は、よくいただく問いから始めます。「経理も、人事も、労務も——なぜ一人でそこまで見られるのか」という問いです。

採用面接の場で、数字の話も一緒に聞く

ある院長先生の採用面接に同席したときのことです。

面接官は院長先生お一人でした。応募者の人柄や意欲は丁寧に見ていらっしゃいましたが、採用後にその人件費がどう収益に跳ね返るかまでは、面接の場では誰も計算していませんでした。

無理もないことです。面接という場は、本来「人を見る」場であって「数字を見る」場ではないからです。

採用は、人事の話であると同時に収益の話でもある

人柄が良くても、配置の仕方によっては収支が合わなくなることがあります。逆に、一人の採用が加算要件を満たすきっかけになり、収益構造そのものを変えることもあります。

このケースでは、面接の場に同席しながら、応募者の経験やスキルをうかがう横で、「この方を採用した場合、稼働配置はどうなるか」「常勤換算での人件費率にどう影響するか」を一緒に整理しました。

人の話と数字の話を、後から突き合わせるのではなく、同じ場で扱う。それだけで、採用の判断は変わってきます。

なぜ、専門を分けずに見るのか

経理だけを見る立場、労務だけを見る立場では、この種の判断には届きません。決算書は数字を教えてくれますが、その数字がなぜそうなったかは、現場の人の動きを見ないとわからないからです。逆に、人の話だけを聞いていても、それが経営にどう影響するかが見えなければ、良い判断にはつながりません。

前職では、東証一部(現プライム市場)上場企業の人事部で、採用・育成・配置・評価という人材マネジメントの実務に携わっていました。そこで体得したのは「組織は人なり」という感覚と同時に、「人の問題は、数字と切り離しては解決しない」という感覚でした。在宅医療の現場に入ってからも、この二つを同じ視線で見る姿勢は変わっていません。

数字を組み立てられて、人の話を聞き取れて、現場の空気も読める。専門を一つに絞らず、経営の全体を行き来できることが、参謀という仕事の土台になっています。

得意分野を一つ持つより、境界を越えて動けること

コンサルティングという仕事の多くは、特定の専門領域を深く掘り下げる形で提供されます。それ自体は間違っていません。ただ、クリニックという現場では、経理の問題と人事の問題と現場の問題が、同時に、絡み合った形で起きます。

採用面接の場で数字の話をする。決算書を見ながらスタッフの表情を思い浮かべる。会議に同席しながら、次の一手を人事と財務の両面から考える。こうした動き方は、専門を一つに絞っていては難しいものです。

得意分野を一つ持つより、境界を越えて動けることのほうが、現場では役に立つことが多いのです。

同じように、人の判断と数字の判断を一緒に整理したいとお考えでしたら、登録していただいても、返信は不要です。まずは、こうした話を読んでいただくだけで構いません。

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