事例29
■マニュアル、ナレッジ共有ツール
訪問診療で使用する携帯型エコーや携帯型精密輸液ポンプなどの医療機器の使い方、ワクチン接種の準備や実施手順といった診療業務から、事務所のセキュリティー管理や請求書の発送といった事務作業まで、様々な業務のマニュアルやナレッジを共有するためのツールがあります。
代表的な製品としては、「Teachme Biz」「tebiki」「NotePM」などが挙げられます。
これらのツールを使えば、動画や画像、テキストを活用してマニュアルを作成し、クラウドで共有できます。紙やローカルデータだと保管場所が分からなくなったり、最新版がどれか分からなくなることがありますが、クラウド共有なら必要な情報にすぐアクセス可能です。マニュアルの追加や修正も簡単で、製品によっては「よく見られているマニュアル」の分析もでき、組織内でのナレッジ共有や浸透に役立ちます。
最後にスタッフの ICT 活用方法、クライアント先での導入事例、セキュリティ対策、そして現状の課題についてお話しいたします。
1. スタッフへのスマホ貸与や個人スマホの使用は推奨しない
訪問診療や往診などなどで往診などでスタッフが外出していることも多い在宅医療機関では、外出先で ICT ツールを利用することを想定してスマホやノートパソコンなどを携高行させる必要がある。
その際、どの範囲までスマホを貸与するかを考えなければならない。スタッフ全員に貸与、貸与する職種を限定、訪問診療のチームごとに1台ずつ貸与などの対応が考えられる。
コミュニケーションのしやすさを考えると、スタッフ全員にスマホを貸与するのが理想的です。ただし、目的はスタッフそれぞれが必要な情報にアクセスし、連絡を取り合えるようにすることなので、全員に貸与するのが難しい場合は、訪問診療を行うスタッフにスマホを貸与し、事務職員には院内のパソコンでチャットツールなどを使用させる方法でも十分効果が期待できるでしょう。
これまで弊社が関わってきた医療機関では、訪問診療に向かうスタッフにスマホを貸与するケースがほとんどです。スマホの活用により ICT ツールを効果的に使い、業務効率を向上させたり、情報共有のスピードを上げてサービスの質を向上させたり、スタッフ間の良好な関係を維持するなど、導入コストを上回る効果を生み出しています。
また、業務でスマホを利用する際には、個人所有のスマホを使う形態(BYOD)もあります。ただし、厚生労働省の「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」では、管理者以外による端末 OS の設定変更を制御するなど、適切な技術的・運用的対策を講じて十分な安全性を確保することが求められています。在宅医療機関では、このような対策を担う情報システム担当者を配置しているケースが少なく、利便性やリスク、管理の手間やコストを考慮すると、BYOD は推奨されません。
2.クライアント先での導入事例について
例えば、連携機能強化型在支診で約 500 人の患者を診療しているクライアント先では、併設の訪問看護ステーションと連携し、電子カルテにはモバカルネットを使用しています。ビジネスチャットツールとして Google Workspace を導入しており、スタッフ間の連絡には主に LINE WORKS を利用していますが、外部連携先を含めた連絡には Cmail を使うこともあります。
スケジュール管理には Google Workspace の Google カレンダーを利用しています。スマホやノートパソコンは事務職員を含む全スタッフに貸与していますが、クラウド連絡帳サービスは訪問診療に行くスタッフの端末にのみインストールしています。
3.セキュリティー対策について
スマホをスタッフに貸与する際には、紛失などによる情報漏洩リスクに注意が必要です。リスクを回避するために、MDM(モバイルデバイス管理)と呼ばれるデバイスを一元管理できるソフトウェアの導入がおすすめです。MDM を使えば、遠隔操作で端末をロックしたり初期化したり、機能制限をかけたりすることで、紛失時の情報漏洩や不正利用のリスクをある程度抑えることができます。また、パソコンを貸与する場合はウイルス対策ソフトの導入に加え、MDM を使った端末管理も推奨されます。さらに、貸与スマホの運用ルールを整備し、貸与時および年 1 回程度の情報セキュリティ研修を行うことが望ましいです。
4.ICT 人材の確保も重要な課題です
規模の小さい医療機関における ICT 導入の最大の課題は、導入できる人材が不足していることや、ツールを使いこなせないことといった「ICT 人材の不足」です。これまでシリーズで紹介した ICTツールも、どれも最低限の設定を行う必要があります。スマホについても、1 台ごとにアプリをインストールし、設定を行わなければなりません。
情報システム担当者を雇うにはコストがかかるうえ、急速に進化する ICT 業界に対応できる技術者を医療機関で採用するのは難しいのが現状です。在宅医療機関では、多くの場合、特に規模が大きくなるまでは、院長や事務長が自ら情報システムについて学びながら導入を進めているケースが一般的です。
自院で情報システム担当者を雇うことや、院長や事務長が導入を進めるのが難しい場合には、外部のブレーン(メディカルラボ)に依頼するのも一つの解決策です。
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