事例27
訪問診療の分野では、ICT を活用した情報共有の取り組みが全国的に進展しています。従来の紙や FAX に頼った方法では、医師、訪問看護師、ケアマネジャー間での情報共有が不十分で、対応の遅れが生じる可能性がありました。
この問題を解決するため、各地域ではクラウドシステムや記録共有ツールの導入が進められ、関係職種がスムーズに連携できる体制が整備されています。また、2024 年度の診療報酬改定では、訪問看護師の役割や ICT の活用が新たに評価され、医師と看護師の連携を促進する制度改革も進行中です。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の象徴ともいえる iPhone が登場したのは 2007 年。その1 年前、2006 年度の診療報酬改定で在宅療養支援診療所(在支診)が制度化され、24 時間対応の往診や訪問看護などの体制が整えられるようになりました。
患家という“アウェイ”な環境で診療を行う在宅医療の特性はスマートフォンとの相性が良く、iPhone発売当初から一部の医療機関で活用されていた。
その後、外来や入院の電子カルテよりも早い段階で在宅医療向けのクラウド型電子カルテが登場した。在宅医療では「訪問先でカルテを確認したい」というニーズが強く、多くの在宅医療を行う医療機関がクラウド型電子カルテとスマホなどのデバイスを導入している。現在では、電子カルテに限らず、様々な ICT ツールを駆使して創意工夫し、独自の付加価値を生み出している医療機関も少なくない。
今回から主要な ICT ツールに関して、シリーズ形式で実際の活用方法を詳しくご紹介していきます。
在宅医療機関で使える ICT ツール
■電子カルテ
在宅医療を行う医療機関では、院外でもカルテを閲覧できるクラウド型電子カルテがおすすめです。
特に、複数の医師が診療を行う場合、情報共有のしやすさからもクラウド型が適しています。オンプレミス型の電子カルテでは、自院にサーバーを設置してデータを管理するため、診療所でも導入費用が数百万円かかりますが、クラウド型であれば導入費用は高くても数十万円程度、月々の利用料も数万円はは以内に抑えられます。
在宅医療向けのクラウド型電子カルテには、重症患者を一目で把握できる機能や訪問スケジュールの管理機能、外出先で書類を作成してメールやインターネット FAX で連携先に送信できる機能など、在宅医療をより便利にするさまざまな機能が備わっています。クライアントには代表的な製品として、「movacai.net」や「セコム OWEL」などを提案しています。
■ビジネスチャットツール
訪問診療や往診でスタッフが外出していることが多い中、チャットツールを使った情報共有はとても便利です。チャットツールは 1 対 1 のやり取りだけでなく、必要に応じてグループチャットを作成し、複数人でのやり取りも可能です。例えば、患家からの連絡事項を共有したり、緊急対応が必要な際にチームを募るといった使い方が考えられます。また、「申し送り専用」のグループチャットを作成し、1 日の申し送り事項をそこに投稿することで、情報を漏れなく共有しやすくなります。クライアントには、「LINE」「Google Chat」「Facebook Messenger」「Trello」といった代表的なツールを紹介しています。
実際には、チャット機能に加えてタスク管理やファイル共有、プロジェクト管理などの機能を備えたビジネスチャットツールを導入しているケースが多い。タスク管理機能は、例えば事務スタッフが医師に書類作成を依頼するときなどに活用される。ファイル共有機能があれば、書類のフォーマットや各種マニュアルをスタッフ間で共有できる。プロジェクト管理機能は、委員会など特定のメンバーがタスク管理や進捗確認をする際に便利だ。
ビジネスチャットツールの代表例としては、「Microsoft Teams」「Chatwork」「LINE WORKS」「Slack」「Google Chat」「Talknote」などが挙げられる。中には、スケジュール管理やビデオ会議機能を備えているものもある。少人数の組織ならチャット機能だけで十分だが、10 人以上の中規模組織ではタスク管理やファイル共有機能があると、情報共有や業務管理がよりスムーズに行える。
チャットツールは外部の連携先との情報共有にも役立つが、事業所ごとに導入している製品が異なる場合は調整が難しい。そのため、地域で使用されている医療・介護の多職種連携に特化した SNSやチャット機能を活用するのが現実的だ。代表的な製品には、「メディカルケアステーション」「カナミッククラウド」「エイル」などが挙げられる。
【Ser.2】へ続く
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