事例19

ポイント I 地域における在宅医療の需要と提供の現状把握
【キーワード】 在宅患者の約 9 割は 75 歳以上の高齢者

地域の在宅医療の需要を測る目安は、75 歳以上人口の将来推計です。
国立社会保障・人口問題研究所のウェブサイト「日本の地域別将来推計人口(都道府県・市区町村)https://www.ipss.go.jp/の将来推計人口・世帯数で、2045 年までの都道府県や市区町村ごとの人口推計が確認できます。
在宅医療を本格的に始める場合は、自院の地域における 75 歳以上人口の将来推計を必ず確認してください。

ポイントⅡ ヒアリングは競合を把握するための手段としても効果的
【キーワード】 在宅医療への思いや、対応可能な診療範囲について伝える

在宅医療の質的なニーズを把握するには、地域の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所、薬局などへのヒアリングが効果的です。
地域の訪問看護ステーションや居宅介護支援事業所は、厚生労働省が運営する「介護事業所・生活関連情報(介護サービス情報公表システム)」https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/で検索ができます。
地域の事業所を検索し、常勤職員数や利用者数が多い大規模事業所から順に訪問してヒアリングを行ってみる。

ポイントⅢ 診療圏の設定
【キーワード】 日常的な訪問診療や往診を負担なく行うためには、移動時間を医療機関から 20 分以内に抑えることが重要

診療圏は、医療機関からの距離や行政区域、幹線道路、河川などの区切りを基準に設定します。
外来機能を持たない在宅医療専門診療所は、在宅医療を提供する地域を事前に定める必要があります。都市部では半径 3~4km でも十分な需要が見込める一方、地方では半径 16km を診療圏としている医療機関も少なくありません。
大都市部では半径 3~4km でも十分な需要が期待できるのに対し、地方では半径 16km 全域を診療圏としている医療機関も珍しくありません。

ポイントⅣ 競合の把握
【キーワード】 地方厚生(支)局のウェブサイトで「届出受理医療機関名簿」を確認

地域の在宅医療の提供体制を比較的簡単に把握する方法についてご紹介します。
地方厚生(支)局のウェブサイトでは、「施設基準の届出受理状況」において「届出受理医療機関名簿」が公開されています。
名簿の「受理番号」欄を見ると、各医療機関がどのような施設基準を届け出ているかが分かります。
例えば、在宅支援診療所については、単独機能強化型が「支援診1」、連携機能強化型が「支援診2」、そして一般的な在宅支援診療所が「支援診3」と表記されています。機能強化型支援診 1・2 を届け出ている医療機関は、過去 1 年間に少なくとも緊急往診 4 件以上、在宅見取り 2 件以上の実績があります。一方、在宅緩和ケア充実診療所(「在緩診実」と表記)を届け出ている医療機関は、過去 1 年間に緊急往診 15 件以上、在宅見取り 20 件以上の実績を持ち、より強力な競合と言えます。

最後に、在宅医療の需要を自ら創り出す
2006 年に在宅療養診療所(在支診)が制度化されて以来、在宅医療は都市部を中心に急速に広がりました。しかし、在支診の届け出が多い都市部とは対照的に、在宅医療を提供する医療機関が少ない地域では、患者さんが在宅医療を選ぶことができない状況です。 在宅医療はまだ成熟した市場とは言えないため、より多くの医師が多くの患者さんに対して在宅医療の選択肢を提示することで、受療率がさらに向上する可能性があります。重要なのは、「在宅医療の需要は自ら創り出すもの」という視点です。医療者が在宅医療の可能性や課題を深く理解し、患者さんや家族にその魅力を伝えることで、初めて患者さんは在宅医療を選択肢として考えることができるようになります。

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