事例22
■診療体制には特に決まったルールはありません。
訪問診療の体制には決まったルールはなく、医師が単独で訪問すれば人件費を最小限に抑えることができます。しかし、弊社がこれまで多くの医療機関の診療体制を見てきた中で、看護師や事務スタッフが同行することで得られるメリットは非常に大きいため、この体制を推奨しております。在宅医療中心の診療所に限らず、これから在宅医療を始めようとする外来中心の診療所にも当てはまることです。
診療体制は、医療機関としての理念や規模に合わせて検討します。医師を増員して規模拡張を視野に入れる場合、さまざまな医師が参加しやすく、医師が入れ替わっても途切れることなく診療を継続できる体制を構築することが重要です。
■看護師が診療に同行することには、多くのメリットがあります。
1.医師の負担を減らします。
在宅医療では、患者さんの診療に加え、連携先との連絡や調整、介護者のケア、介護保険サービス利用のアドバイスなど、業務が多岐にわたります。同行する看護師にこれらの業務の一部を任せることで、医師は診療に専念できるようになります。適切な待遇を用意することが前提ですが、夜間や休日の患者さんやご家族からの連絡対応も交代制で担ってもらうことが可能です。
2. 診療やケアの質をさらに高めます。
看護の視点から患者さんやご家族に積極的に関わってもらうことで、生活に根差したより包括的な支援が
可能になります。医師を増やすと診療の質にばらつきが出やすいため、コミュニケーションが苦手な医師の場合は、看護師が積極的に患者さんやご家族と話すなど、医師の弱点を看護師が補うことで診療やケアの質を維持することができます。
3. 連携先との円滑な連携。
在宅医療では、定期訪問以外の日にも患者さんの家族や連携先である病院、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所などから連絡を受けることがよくあります。普段から診療に同行している看護師がいれば、医師に代わって一次対応を行ったり、場合によってはその場で判断することも可能です。連携先からの問い合わせに迅速に対応するなど、連携の質を高めることは集患に直結するため、しっかりと対応が出来ます。
4. 医師の採用に良い影響を与える。
診療体制は医師の採用に大きな影響を与えます。最近では、採用面接の段階で看護師の同行を希望
する医師が増えています。求人する医療機関側も、医師単独の訪問を前提とする場合、在宅医療未経験の医師を採用しづらい状況です。経験豊富な医師であっても、オペレーションに慣れるには時間がかかります
しかし、看護師が同行する診療体制が整っていればサポートが可能で、即戦力として活躍してもらえます。
診療体制を充実させることで、採用できる医師の幅が広がることを改めて強調したいです。
5. 非常勤医師のサポート
週 1~2 日しか勤務しない非常勤医師が診る患者さんが急変した場合、他の医師が対応することになります。カルテから情報を得ることはできますが、看護師が同行していれば、これまでの経緯や患者さん、家族の心情を踏まえた対応が可能です。非常勤医師の診療については、診療やケアの質を確保する観点からも、常勤看護師を同行させることが望ましいです。最近では、看護職員の配置が義務付けられている特定施設への訪問診療でも、看護師の同行が求められるケースが増加しています。その背景には、「雇用する看護職員による医療行為を最小限に抑えたい」という施設運営側の意図があります。このような現状には賛否両論ありますが、施設での在宅医療においても看護師の同行が差別化のポイントになると言えるでしょう。
■同行者は看護師か事務スタッフか。
近年、医療機関が事務スタッフを育成し、診療補助やカルテ入力代行、他事業所との連携を任せるケースが増えています。事務スタッフは看護師に比べて人件費を抑えられる点が特徴です。同行するスタッフを看護師か事務スタッフのどちらにするかは院長の考え方次第ですが、在宅医療を新たに始める場合は職種にこだわらず、在宅医療に興味を持つスタッフを選ぶのが良いでしょう。一方、規模の拡張を見据えるなら看護師が
優位です。看護師は一定の医学教育を受けているため、ゼロから事務スタッフを育成するより即戦力になります。また、意思決定支援や家族のケア、特に訪問看護ステーションとの連携においては、看護師の方が信頼を得やすい面もあります。
■人件費の増加分はしっかりと回収できる。
看護師や事務スタッフ、運転手を採用すると人件費が増えますが、十分に回収可能です。看護師と運転手を例に説明します。看護師の日給は約 18,200 円(月額 40 万円/社会保険料と賞与積立分含む)÷稼働日 22 日、運転手の日給は約 9,300 円(1,163 円×実働 8 時間)とすると、1 日あたり約 27,500 円の人件費がかかります。一方、在宅療養支援診療所(在支診)では、訪問件数が 1 件増えるごとに約 3 万円の増収となります。看護師や運転手が同行することで医師の負担が軽減され、診療の効率化が図れれば、訪問件数を 1 件増やすのは難しくありません。看護師 1 人の人件費(月 40 万円)は在宅患者 7 人分(月約 6 万円×7 人=約 42 万円)程度に相当します。そのため、新たに看護師を採用する場合、実患者数を 7 人程度増やせば回収可能です。
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